資本政策の失敗
資本政策の失敗についてのお話です。
失敗のパターンは様々ですし、各社の思惑もそれぞれですが、主たるものをご紹介します。
1.上場時の形式基準を踏まえていない。当然ですが、資本政策のゴールは上場で、その基準をクリアすることは前提なのでが、時々全然これを考慮していない資本政策を見ます。流動性を確保するために、1取引単位の株価水準なども考慮する必要があります。
2.当初作成した利益計画が非常に甘いため、実績と計画との乖離が大きく、資金調達が予定通りに行かず、資金繰りが悪化してしまう。また、利益水準が予定よりも低いので、公開時の株価が未公開時よりも低くなってしまい、IPOの時期がずらさざる得なくなってしまう。利益計画が予想よりも極端に異なると、IPO準備そのものがなくなり、人材が流出し、更に業績が悪くなるという悪循環となってしまう場合があります。
3.ベンチャーキャピタル(以下VC)の持株比率が高く、自主的で、安定した経営判断ができない。VCの持株比率が高いことがすなわち悪なのではありません。積極的に販売先を紹介したり、企業価値向上に寄与してくれるVCもあります。しかし、本質が安定株主ではないので、安定株主という観点からは問題となります。VCは投資契約によっては買取を要求しますので、そんなこと知らなかった、聞いていないなどと泣き言を言わないようによく契約書を理解しておく必要があります。また、VCの持株比率が多いとIPO時にロックアップ条項等少し煩雑になります。それと、VCの作成する資本政策は、VCにとって有利なものとなっていることが普通ですから、よく検証もせずに実施した結果、知らない間に自分の持株比率がこんなに少なくなっていたなどと間抜けなことを言わないようにしましょう。
4.経営陣、役員、従業員に対するストックオプション(以下SO)枠をたくさん設けたことに、既存株主が反対し、議案が否決され、資本政策が予定通り進まない。本当に必要なSOなのか、きちんと既存株主に説明できるものなのか、あらかじめ検討して、それを踏まえた資本政策を作成しなくてはなりません。
5.当初まったく考えていなかった関係会社の整理をしなければならなくなり、合併等を実施した結果、資本政策が予定と大きくずれてきてしまった。上場時には関係会社の整理をしなければならない場合があります。そうしますと株主構成に大きな影響を及ぼす恐れがありますので、資本政策の作成の段階から、関係会社についてはよく検討しましょう。
6.増資をする際に、高い株価で行った結果、次の増資にあたって、発行価格が高すぎるとして、増資に応じてくれるところがなく、資金繰りが悪化してしまう。オーナーの持株比率を維持するには、株価を高くすることが効果的ですが、会社の経営成績や中身が伴わない高すぎる株価は、次回の増資の際に苦労する場合がありますので、注意が必要です。
7.相続対策を実施していなかったため、相続後に株式が多数に分散してしまった。または、早期に実施していなかったので、株価が高くなりすぎて、対策を行いたくても実施できない。株価が低ければ、ある程度株式の移動に融通が利きます。早めに実施しましょう。